小)なあ。いいから聞けって。下のロビーんとこに、噴水があんだろ。ライオンがゲロ吐いてるみたいなやつ。あの水どっから来てるか知ってるか。いや、答えなくていい。お前は知らない。と言うことを俺は知っている。なんせ創業100年だからな。このホテルの噴水の仕組みのことを知ってる奴なんざ、どこにも居やしねえんだ。そこでピンときた。あれだけの水の量を水道管から一気に引くには、予算がいくらあっても足りない。あれ地下水なんだよ!しかも触ってびっくり。あったかいんだ。これが何を意味しているか分かるか。温泉が眠ってるんだよ、ここの地下にはよー!そこでだ、隣のスイカ畑を買い取って、横穴を掘る。ホテルからお湯を拝借。そのお湯をホテルに売る。ガッポリ。どうだ、完璧な計画だろー!

片)あの噴水はどことも繋がってない。モーターで循環させてんの。あったかいのは水中に照明が入ってるから。以上。

小)ダーーーー!

片)アー!せっかくキレイにしたってのに。

小)なんだお前は、夢、なし、ホウイチかよ。

片)ゴロゴロと転がるな。

小)バクがよー、

片)バクってなんだよ。

小)バンドだよ。

片)バンドじゃねえよ。

小)バンドじゃねえって何で分かんだよ。俺がバンドのバクのこと言ってっかもしんねぇじゃねぇか。

片)俺がバクじゃねえじゃん。俺はバンドじゃねえじゃん。

小)ハッハッハハ。あっわりい、余計なこと言っちった。あー、どっかに上手い話が上手いこと転がりこんでくる、上手い話はないもんかね。

片)ややこしいけど分かりやすい奴だな。

小)分かりやすいだ?お前に俺の何が分かる。

片)分かるよ。金が欲しいんだろ。

小)そーう!ラクしてドーンってのがいいんだ。

片)地獄へ落ちろ。

小)地獄へドーン!ハッハッハッハッハ。笑えねえよ!

片)自分が言ったんだろ。あのな、お前は地道って言葉を知らないのか。

小)俺は地道って言葉を知らないのだ。いいベッドだな。ちょうだい。

片)ダメに決まってんだろ!寝たけりゃ金払って泊まれ。

小)何で金使わなきゃいけねんだよ。金作ってナンボの話してんだろうが。

片)働けよ。

小)出た出た、立派な大人の意見。「しゃべり場」出れるよ、「しゃべり場」。

片)お前が子ども側で出ろ!

小)「なんかー若いうちにしかー、こうやって遊べないんだからー、仕事とか勉強とかしないでー、遊んでた方がー、なんか全体的にー、楽しくない?」ムカつくんだよ、あいつら!

片)全部自分が言ったんだろ!あのな、お前には社会人としての自覚がないのか?

小)俺には社会人としての自覚がないのだ!

片)自信満々に言うことじゃないだろ!いい加減にちゃんと働いたらどうだ。ホテルの求人で良ければ、紹介してやらないこともないぞ。

小)ダメだよ。俺、掃除苦手だもん。ザ・片付けらんない男。

片)リモコンを盗むな!別に俺、お掃除係じゃねえからな。

小)何で今やってんだよ。

片)お前がいきなり表れたから、何とか理由つけて話できるように運んでやったんじゃねえかよ。ティーパックを盗むな!本業は、アシマネだ。

小)何だ、アシマネって。アシスタントマネージャーかよ。

片)アシスタントマネージャーだよ。

小)うわーしまった、ビンゴっちまった。俺はこういうつまんないとこで運使っちまうんだよなー。

片)まぁここは、ヨーロッパスタイルのクラシックホテルだから、コンシェルジュって言い方してるけどな。

小)ここは、ヨーロッパスタイルのクラシックホテルだから、コンシェルジュって言い方、

片)帰れ!

小)帰れー。

片)俺はそういうの続けられると泣くからな。

小)わーかったよ、もうやんねえよ。何でもいいから、仕事くれ。

片)まじめにやるか?

小)やるやる!もしここで働かしてもらえるんだったら、セブンスター吸わねえよ。わかば吸う、わかば。

片)禁煙だよ。

小)ニコレット噛むからさ!

片)まったく。掃除が嫌なら、配膳なんてどうだ?

小)何だ、配膳って。

片)宴会用で大規模なパーティーがあるとな、人が足んないから、バイト雇うんだ。お盆持って、料理を運ぶ。

小)運びながら食ってもいいなら、やってもいいけどな。

片)ダメに決まってんだろ!

小)パッてな。

片)何やってんだ?

小)食ったんだ、今、料理。パッ。

片)ツバ飛ばしてるようにしか見えねえじゃねえかよ。ダメだよ、ダメ!

小)ダメダメダメダメダ、お前はダメ人間か!

片)お前だろ、ダメ人間は!

小)ダメ人間だー。ダーン、ダーン。は、はー風呂入るぞ。

片)ダメだよ!

小)いいじゃねえかよ、ここんとこ入ってねえんだよ。

片)俺んちじゃねえんだぞ。お前はホテルを何だと思ってんだ。

小)お前んち。

片)だから!

小)おーい。このホテルにはシャンプーもリンスも石鹸もひげ剃りも歯ブラシも歯磨き粉もねえのか。

片)そんなわけねえだろ!あっ!

小)シャワーカーテンもねえじゃん。

片)くっそー。前の客だな。

小)あーあ。どうすんだ。知ーらないよー、知らないよー。何にも知らないよー。

片)だいじょーぶー。だいじょーぶー。全部想定範囲内ー

小)何だよそれ。

片)うちの若いベルボーイに教わったんだよ、いいだろ。

小)じゃなくて、想定範囲内って。

片)あーー、備品持ってかれるなんてしょっちゅうなんだよ。備品は消耗品だから、あのぐらい持ってかれても黙って対応できるようにしてあんの。

小)動じないね。

片)だから俺んちじゃないんだって、

小)いいじゃねえかよ、ビール1本ぐらい。想定範囲内だろ。俺今20円しか持ってねえんだ。

片)ちょっと待って。【部屋を出ていく】

小)おいどうしたんだ。ちょ、待てって、おい。なっ、え?【テレビを付ける】お、来た、来た、あーもう。有料確認ボタン。

片)【部屋に戻ってくる】勝手に見るな!

小)いいじゃねえか、想定、アニメのもあんだな、こういうの。

片)うるせえよ!廊下まで丸聞こえだぞ。

小)その廊下まで何しに行ってきたんだよ。

片)あー、お金が落ちる音がしたんだ。っで、行ってみたら案の定お客さまがそこで財布をぶちまけてた。だから拾うのを手伝って来た。

小)廊下ったって、絨毯だろ。別にお金の音なんてしなかったけどな。

片)プロってのは、こういうことだよ。

小)何お前。かっこいいじゃん。よし、俺もかっこよくなりたい。ここで働かしてください。

片)つまみ食いする配膳なんて認めねえかんな。

小)配膳なんてやんねえよ。俺もお前とおんなじ奴がいいや!

片)何言ってんだお前。

小)コン、コンだ。なんだ。

片)ダメだよ、って言うか無理だよ!ここまで来るのにどれだけ段階があると思ってんだよ。

小)【ホテルの電話に出る】客室でございます。

片)勝手に出るな。

小)私でございますか?私、このたびコンコルズに内定が決まりました

片)コンシェルジュだ!もしもし。あー、ちょっと変わったお客さまがいらしたんだ。え、ロビーが臭い?何だろう。すぐに戻る、悪いな。はい。【電話を切る】帰れ!ここにはお前のような奴にできる仕事なんてない!

小)チェッ。無責任な。俺が本当にダメ人間になっちゃってもいいのかよ。

片)何だそりゃ。

小)ガム、とか、万引きしちゃうぞ。

片)ちっちぇえんだよ!

小)分かったよ、でっけえことやってやんだよ、大泥棒だ。

片)ターゲットなんだよ。

小)パン!

片)戦後か!

小)「戦後か」はねえよ、お前。一斤いってやんだよ、一斤。

片)おい!俺は、別にお前が嫌いなわけじゃない。むしろ好きだ。だから心配なんだ。悪い方に行って欲しくないんだよ。大切な友達だから、まっすぐに生きて欲しいんだ。

小)お前。

片)だから、俺の財布を返せ。

小)何で分かった?

片)想定範囲内だ。(終)

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