
どーもーーーー。どーも、えー和牛ですー、よろしくお願いしまーす。

よろしくお願いしまーす。

ま、あのー子供の時なんかはねー、

はいはい。

寝る前にいろんな昔話を読んでもらったじゃないですかー?

毎日お母さんが読んでくれましたねー。

そうそう。ま、有名なんで言うたらあの『鶴の恩返し』とかねー。

あ、懐かしねー。

懐かしいよー。

ちょっとやってみようか?

やってみんの?

おじいさんやるわ。

おじいさん?じゃ、僕があの助けてもらった鶴で、若い娘に姿を変えて、そのおじいさんの家に行きますね。

最初そんなんやったね。

そっからスタート。

はいはい。今宵は冷えるのぉー。

トントン!

おやこんな時間にガラガラガラ。

夜更けにすいません、道に迷ってしまって。

おぉそれはさぁさぁさぁ。

ありがとうございます。

機織り機は奥の部屋にありますんでね。

なんで知ってんねん!オイ。

ぜっっったいに覗かないんで大丈夫でございます。

全部言うてもうたらアカンねや、お前。

鍵も付けときました。

鍵も付けときました、段取りわかり過ぎ。

え?

まずはなんにも知らんと中へ招き入れて

ん。

ご飯を食べさしてくれたりすんの。

あぁあぁ。鍋でも食べて温まりなさい。

うわ、鍋いただきますぅ。

美味しいじゃろ?うちの鶴鍋は。

ぶーーーっ!

この辺は鶴が良く獲れるんでね。

待て待て待て待て待てぇ。共食いなったやないかい!

共食いなったん?

こんなグロテスクなシーンないです、別のもんいただくわ。

ほうほう。

で、食べ終わったら鶴の娘さんが言うんですよね。おじいさん、

ん?

今日は泊めていただいたお礼に、機を織ります。

そんなことが出来るのかい?

はい。

手羽先が器用なんだねぇ。

手先って言うてくれるかなあ?

正確に言わなと思って。

正確にって、手羽先って気付いとるやないかーい。

あぁそうか。

気付くのこのあとね。

このあと。

機を織ってる間ー、決して覗かないでくださいね。

わかったよ。洗いものでもしようかな。

スーッ。

洗いものしてくれなかったからー。

文句聞こえたー。閉め際にいやーな一言聞こえたよ?おじいさん。

はぁーしんどい。

機織るんで覗かないでください。ファサッ。

ファサッて聞こえた、気になるなー。

パタパタ。

ちょっとだけ覗いてみようかな?

パタパタ。パタパタ。

ちょっとだけね。ガラガラガラガラガラ。

どこがちょっとだけやねん?それぇ。

ケモノ臭い。

ケモノ臭いなんか言わへんねん、お前。誰がそんなガラガラって扉全開にしちゃうの?こっそりやろー?

こっそり?

開けても隙間くらいのもんで

隙間ぐらい。

音を立てたらアカンねん。

うん。

こんな感じや。スーッ。

あー上手。

こういう感じ。

スーッ。

そうそうそうそう。

スーッ。

そっち開けたらアカンやないか!

換気したいのよー。

換気したい、いつまで臭いって言うてんねん!見たな?

見た。

ほな見てしまったことを伝えて来て。

お前さんはあの時の鶴だったんだね。

隠していてすいません。これは私の羽を織り込んだ機です。きっと高く売れるでしょう。

この織り方ではあんまり値段が付かないと思います。

ダメ出ししてくんなや!なんでお願いしますやねん!立派な機です、ありがたくもらっといて。

ありがとぉ。

ではおじいさん、お別れです。

行くのかね?

ファサッ。今までありがとうございましたー。

ファサッ。困ったことがあったらまたいつでもおいでねー。

なんでジジィも飛んでるぅ!?もうえぇわぁ。ありがとうございましたー。