
あれ?すいません。小説家のミナミノショウゴさんですか?

ああどうも。

やっぱり。僕大ファンなんですよ。

あーそうなんや。

失礼な話なんですけどつい最近先生の作品初めて見てそっからどっぷりはまって今何十作品と読みました。

それはありがたいね。

今日先生のまだ読んでない作品読もうと思って。今日出た新刊。出たじゃないですか。あれをここで読もうと思ったら隣に先生いたからびっくりして。すごいな。

それは僕もうれしいね。僕はねすべての作品魂を込めて書いてるからね。

カッコイイな。

まあまあ・・・そんな。

静かにしてるんで隣で先生の作品読んでもいいですか?

どうぞ。

こんな偶然あるんやな。そうや。これ楽しみにしてたやつ。おもろいな。すごいなこれ。えっと・・・あーそや『北国の沈黙』これも楽しみにしててんな。おもろい!どうやったらこの設定思い付くねん。

ちょっとごめん。それ何してんの?

はい?

何してんの?それ。

何してるって速読ですけど。

速読?

僕速読できるんすよ。

そうなんや。えっ・・・もしかしてやけど俺の作品全部速読で読んでる?

はい。この一週間で80作品ぐらい。

80作品!魂込めて書いたやつを?

全部最高ですよ。

すんごい複雑な気持ちやねんけど。

いやこれはすごいな。

じゃあさ『北国の沈黙』どこが良かった?どこが良かったか言ってみて。

2章の冒頭でさらっと出てくる赤いリンゴ。あれをラストシーンで持ってくる美し過ぎるロジックですかね。

ああ・・・。

あと主人公の死にたいっていう言葉は裏を返せば生きたいっていう意味なんですよね。

行間の機微まで。行間の機微までいけんの?でも腹立つけどな。

そうやこれ彼女にめっちゃおすすめされたやつ。『デトロイトを救った男たち』これ上中下巻の三部作なんですよね。

それは笑いあり涙ありの僕ん中でも最高傑作といっても過言ではない作品なんや。

そうなんすか。それは楽しみ。

おー待て待て・・・。上中下巻をそんな感じで持つやつおらん。上中下巻の持ち方じゃないから。

集中したいんで。

いやいや・・・。

おもろい!

すごいなこいつ。すごいなおい。いやいやあのな・・・。

すいません。読後感に浸りたいんで黙っててもらっていいですか?ハァー。ハァ・・・。ハァー・・・ハァ・・・。

何で読む時間より浸る時間の方が長いの?なあ!その時間読む時間に回せや。なあ。

先生の作品ホンマさくさく読めますよね。

いやさくさくすぎんねんて。

ホントに速読しやすいんすよ。

それ言われて俺どういう気持ちになったらええの?

ホント先生のパラパラ小説は読みやすい。パラパラ小説!

パラパラ小説って何?そんなジャンルないよ。

この勢いで今日出た新刊読んでもいいですか?

新刊あのな・・・。いやちょっと待って。これはな構想に5年費やした作品やねん。

そうなんすか。

待て待て待て待て!5年も!費やした作品やねん。

分かりました。

いや分かってるやつのしならせ方ちゃうねやんか。分かってるやつのしならせ方じゃないねん。

すいません。ホントに楽しみにしてるんで。すいません。集中したいんですよ。

ああ・・・。5年を5秒で。

これ全然おもんないっすね。